2008年02月21日

\(◎o◎)/!『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎

読み終わって、フゥと一息つく。
まるで壮大なドラマを見終わったような満腹感と達成感。
けど次から次へと頬を伝う涙。。。

伊坂幸太郎バンザイ!
よくぞこんな本を書いてくれた。

あらゆるところに張られまくった伏線。
登場人物や小物すべてが絡まりあって、最後の最後まで突き進んでいく。
去年も伊坂作品をたくさん読んできたが、感想を書くところまでもう一歩いかなかった。
(伊坂作品は感想が書きにくい、ということもあるが…あせあせ(飛び散る汗))

けどこの作品は文句なし。ホンマすごいわ。
すごすぎて、正直、言葉がでてきません。


 
 

国民投票により首相に選ばれた野党の若手代議士・金田が、故郷仙台で凱旋パレードを行う。
ちょうどそのとき、元宅配ドライバー青柳雅春は大学時代の旧友・森田森吾に何年かぶりに呼び出されて車の中にいた。森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は鬼気迫る調子で訴える。
「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」
そのとき遠くで爆音が聞こえた。

金田首相暗殺…。

森田の言葉に促され車から出る青柳の前に、折りしも警官が現れ、すっと拳銃を構えた…。大逃亡劇のはじまり…。


物語は、時系列バラバラに進む。

 事件のはじまり
 事件の視聴者
 事件から20年後
 事件
 事件から3ヵ月後


大部分のページが割かれているのは、青柳の逃亡劇が書かれる『事件』だが、
その他も決して気が抜けない。
1ページ、1文たりとも気を抜いて読んではいけない。
いや、読めないと言ってもいいだろう。

そんなことをしたら、何度も前のページを繰って見返すことになる。


青柳が陥れられ、はからずも逃亡していく様は、村上龍の『五分後の世界』で、
主人公が異世界にずるずると引きずりこまれていくのを思い出す。
そして話のスケールのでかさと疾走感は、やはり村上龍の『半島を出よ』を
思い起こさせる。
(ちょっと言いすぎか^^;)


異常なほど短時間に次々と現れる青柳がやったという物証。
そして次々と現れる警察の追っ手。
自分は何故、身に覚えのない首相暗殺犯として追われなければいけないのか?
仙台の街をひたすら逃亡する青柳。
首相暗殺犯として青柳のことを報道するマスコミ。
周り中が敵??
そんな中、真に青柳のことを知る人々のとる行動は…。


はっきり言って、断崖絶壁、後がない状況。
このまま捕まるしかないのか。
ケネディを暗殺したとされるオズワルドは、拘留途中で殺される。
あきらかに口封じ。
森田の言葉がリフレインする。
「おまえはとにかく逃げて、生きろ」

この極限の状態を、伊坂幸太郎はみごとに書ききっている。
逃げ道を見つけたと思えば、そこには先回りした敵がいる。
敵は国家権力であり、世間の目である。
そのすべてを敵にまわし、ひたすら逃げる。そして考える。どうすべきなのかと。
物語は、時に現在の状況、時に過去のできごとをリンクしながら語られる。
けどその継ぎ目で物語は途切れることなく、スピード感は維持したままだ。
過去の言動が、現在の行動の伏線となり、物語は進む。
引っ掛かりを感じさせることなく読ませる技術はすばらしいと思う。


タイトルにもなり、物語中でも、何度と登場する『ゴールデン・スランバー』
すばらしい眠りを意味するこの言葉は、“アビーロード”に収められた曲でもある。
ボクもよく知っている曲。
壮大な印象を与えるこの曲が語るもの。
「Once there was a way to get back homeward」
「Golden slumber fill your eyes.Smiles awake you when you rise」

ゴールデンスランバーは、果たして青柳に訪れるのだろうか。


伊坂作品ではよく感じるのだが、登場人物の語る言葉はとても奥が深い。

気に入った言葉をメモっておいて、使いたいなぁと思うくらいだ。
( ..)φメモメモ

この作品でもそう。
特に青柳をよく知る人々の言葉には心打たれる。

家を取り囲んだレポーターに青柳の父は言う。

「俺は、あいつが素っ裸で生まれて来た時から、知ってんだ。母ちゃんなんて、あいつのことに関してはもっと詳しい。腹にいた時から知ってんだからな。歩き始めた時も、言葉を喋りはじめた時も全部、俺は見てきた。長えんだよ、付き合いは。で、昨日今日、雅春のことを調べたようなおまえに、何が言い切れる」
「お父さん、息子さんを信じたい気持ちは分かりますが」女性リポーターは早口で言った。たくさんのマイクが、高らかに突き出される。
「分かるのか?」青柳雅春の父が短く言い放つ。目はじっと、女性リポーターを見ていた。「信じたい気持ちは分かる? お前に分かるのか? いいか、俺は信じたいんじゃない。知ってんだよ。俺は知ってんだ。あいつは犯人じゃねえよ」


こんなセリフを父であるボクは、この状況でカメラを前にして言えるだろうか、
とつい考えてしまう。
子どもたちのことは知ってる。確かに知ってる。
その子どもをただ信じる、のではなく、「知ってる」と言い切れる父。
それは、その手で子どもを育て上げた自信からくるのだろう。
自分の背中を見せて育ててきたというゆるぎない自信。
このようなセリフが吐けるようになってみたい。


もうひとつハートウォーミングなのは、青柳の元カノ樋口晴子とのつながり。
野ざらしにされた車をめぐるエピソードには涙があふれる。
時を経ても、居場所が離れていても、つながっている。
劇中、逃亡する青柳と晴子は、直接言葉を交わすことはない。
しかし同じ時を過ごした二人の心は、たとえ愛情はなくなったとしても、
つながっていた。
それがとても印象的なすばらしいラストシーンを生んでいる。
そう、とても素敵な余韻をボクに与えてくれた。


とにかく最後のページを閉じたときに放心したような気分になった作品も久しぶりだ。
きっと近い将来、ドラマ化か映画化されることになるのだろうが、
原作のもつすばらしさを、ぜひとも壊さないようにしてほしいと切に願う。

実は、青柳役にはある俳優のイメージが浮かんでいるのだが…
それは、ひ・み・つ(^^)
posted by だのん at 22:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本読んだ






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