2009年12月05日

『新参者』 東野圭吾

殺人事件を扱っているのに、こんなに心が洗われる思いになるのはなぜだろう。

人には、他の人から見えない、見せない顔があり、そこには美しい思いが隠されている。
その事実を暴くのではなく、必要に応じて伝えるべき人にそっと伝える。
決しておせっかいではなく。
そんな加賀恭一郎の姿勢は素晴らしいと思える。
さらには人形町の人々の隠された顔がとても人間らしくていい。

人間っていいな。
親っていいな。
改めて思う。


新参者
講談社 2009-09-18
売り上げランキング : 249
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



これまでも東野圭吾作品にたびたび登場した加賀。
赤い指』以来、2年ぶりに読むことになった。

日本橋に転属になった加賀がある殺人事件の捜査にあたる。
聞込みに回る先々ではちょっとした問題が起こっている。
殺人事件の捜査には何ら関わりのない、家族のうちわの問題だ。
はたから見たら、特に殺人事件の捜査から見たら何でもないような問題。
民事不介入の民事といえないほどの問題であるが、当事者たちにとってみれば大きな問題。
それを加賀はひとつひとつ丁寧にほどきあかしていく。

見事としかいいようがない。

少し回転が悪くなった歯車の関係であった人々が、加賀のさした油のおかげで
またスムーズな回転に戻っていく。
章ごとにスポットライトをあてる人たちが変えられ、章ごとに物語がある。
それが連なる連作短編集のようにも楽しめるが、やはりひとつの殺人事件を追っている長編でもあるのだ。
短編としても長編としても成り立っているところはすごいと思える。
人形町という舞台からか、登場人物もみな剥いてみれば人情があっていい人で
ほんわかハートウォーミング。
なかでも、ほんの輪郭しか見えていなかった被害者の実像が顕になってくる第5章以降は
ほんとに涙が止まらない。
この愛情の源泉…それは人が人を愛することだろう。
わが子へ、親へ、友人へ対する愛。
その奥深さを感ぜずにはいられない。
自分は周囲の人に支えられて、今生きているんだな、と思う。

事件を通して、人々は変わっていく。
それはとてもいい流れに。
見えないところで活躍している加賀の力も大きい。
加賀は、ただの捜査の一環だという。
だがこうも言っている。

「上杉さん、そこですよ」加賀が身を乗り出してきた。「俺はね、この仕事をしていて、いつも思うことがあるんです。人殺しなんていう残忍な事件が起きた以上は、犯人を捕まえるだけじゃなく、どうしてそんなことが起きたかってことを徹底的に追及する必要があるってね。だってそれを突き止めておかなきゃ、またどこかで同じ過ちが繰り返される。その真相から学ぶべきことはたくさんあるはずです。実際、清瀬弘毅君は学んだ。だから変わった。でもまだほかに、変わらなきゃいけない人間がいるとは思いませんか」

この姿勢が人々に何かを気づかせ、変えていったのだろう。
加賀自身、多くの事件を通じていろいろなことを学び、こう言わしめるようになった。
それが最後の最後まで、犯人までをも変えることにつながるのだろう。


それにしても東野圭吾の描く人間模様はホント奥深い。
離れてもくっついても家族は家族。
親子は親子。
人間臭くて何が悪いだろう。
とても心があったかい気持ちになった殺人事件だった。
タグ:東野圭吾
posted by だのん at 16:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本読んだ






この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。