2009年07月12日

『贖罪』 湊かなえ

小学校の時の友だちの顔は思い出せても、そのお母さんとなると難しい。
さんざん家に遊びに行き毎日と言っていいほど顔を合わせていたのに記憶にはほんのカケラしかない。
それがたとえ今ボクが25歳で、10歳の時の友だちのお母さんのことを思い出して、といわれても記憶の密度は少し濃くなる程度ではないだろうか。
友だちのお母さんといってもそんなものだ。

だがこの4人は違う。
恐ろしい事件を目撃した4人は、被害者の少女、それはさっきまで遊んでいた友だちなのだが、そのお母さんから恐ろしい言葉を浴びせられる。
それは彼女たちを呪縛し、奇しくもちょうど時効間際の15年後に彼女たちはそれぞれに贖罪?をすることになった…。


4488017568贖罪 (ミステリ・フロンティア)
湊 かなえ
東京創元社 2009-06-11



日本一空気のきれいな町。
それも精密機械の工場が建てられたと言うだけで公式な統計ではないのだが、それでもその町はそう語られるしかない田舎町だった。
そこで小学生女児の殺人事件が起こる。
犯人を目撃していたのは4人の同級生の女子。
その彼女たち…15年後25歳になった彼女たちの独白で物語は進んでいく。

『告白』と同様、章ごとに手紙だったり、PTA総会での発言だったりと独白の仕方と語り手は変わっていく。
しかし根底にあるのはすべて同じ、15年前の事件のこと、そしてその2年後に殺された少女の母親から言われた、短くも恐ろしい命令だった。
それが贖罪なのだと。

バカバカしい、と受け流されるだろうか。
自分たちは単なる目撃者であり犯人ではない。
贖罪などする必要などないではないか。
しかしそこには四者四様の捉え方がある。
4人のその後の人生、思いが語られることで、事件が多角的に見えてくる。


独白のみでの構成、小学校のプールで殺される女児。
『告白』とかぶる部分はあるけど、独白にこれだけ人を引きつける力があるのだということを改めて強く感じる。
独白だけに、そのひとの主観120%であり、性格・考え方がそこにはありありと現れる。
まだ『告白』『少女』に次いで3作目だが、湊かなえには読ませる力がある。
さすがに『告白』の第1章ほどの衝撃はないものの、しっかりと根付いてきた気がする。
あきがくると言う人がいるかもしれないが、ボクは意外と好きだ。
人間のドロドロした内面をみるのが好きというのも驚きだけど、怖いもの見たさ感覚なのかな。


最終的に連鎖していってすべてがつながるのは『少女』と同じ。
伏線が少し明らかであるのが残念だけど、そしてつながりすぎ感もあるけど、この本だけで完結させるという点では成功してるのかな。
1Q84に比べるのもなんだが、最後には超クリアになる。
最終章は独白ではないが、後日談的に明るいトーンで終わり、前2作に比べて救いがある。
こういう終わり方も好きだ。


『告白』では我が子が犯罪を起こすということの恐怖を味わった。
この『贖罪』では被害者だけでなく目撃者となることへの恐怖も実感できる。
もうこうなるとなにがなにやらわからない。
願わくばどの立場にもなってほしくはない。
それはどの親も思うことだろうが、現実にそうなる可能性はないとは言い切れない世の中だ。
近隣の不審者情報も途絶えることはない。
子どもたちは大きくなり、目の届かない範囲も広がっていく。
子どもたちの自主性に任せることも出てくるだろう。
今目の前には兄ちゃんに置いてけぼりをくった妹が「つまんない」を連発している。
こんな小うるさい状態でも、それが実はとても幸せでラッキーなことなんだと実感せずにはいられない。
タグ:湊かなえ
posted by だのん at 18:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本読んだ






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