2009年02月25日

『少女』 湊かなえ

人が死ぬところを見てみたい、と思う少女たち。
それはやっぱり、人が死ぬところを見たことがないからわく感情なのだろうと思う。
TVでも映画でも、本の中にも、人が死ぬところはあふれている。
何より現実世界にも…。
ニュース、新聞、あらゆるメディアが死を伝えている。
けど、身近に死を見てしまうと、それも身内の死などを見てしまうと、
とてももう一度見たいという感情なんてわいてこない。
その瞬間は自分の心の中に今でもすぐ出てくるものとして刻まれているから。

少女たちのひと夏の、いや実質一週間の出来事をつづったこの本は、
あの衝撃的な作品『告白』の湊かなえの第二作だ。
正直あの本の印象が強すぎて、前半は読み進めるのに体力を消耗した。
あの衝撃的な第一章からジェットコースターのように遊園地滑り落ちる感覚は、
この本では少しなりをひそめている。
だが、すべてが連鎖的につながりそれが見えてくる後半は、やはり流れるように進む。
そして最後のページをとじたあと…冒頭に戻らずにはいられない。
そこでようやくすべての鎖がつながる。
ちょっとつながりすぎだろ感がなくもないが、この作品も問題意識を投げかける作品だった。

少女
湊 かなえ
4152089954 少女 湊かなえ

 


『告白』の中1から比べると、主人公の年齢が女子高生にあがった。
女子高生もまだ“少女”には違いないが、中1と言えばわが家の長男に近い年齢。
だからこそ、『告白』を読んで子どもを育てることの難しさに恐怖したのだった。

今回は高校生ということで、まだうちの子たちには少し先の世界であり、
ということは30代後半のオジサン(・・;)にとっては対局にあるような存在だ。
身近に言葉を交わす存在ではなく、生態や思考もおそらくかけ離れてるのだろう。
一時期、女子高生がブームを作り出すと言われていたが、
マーケティングの対象としては非常に興味深い存在ではある。
ただし、どうやって調べたらいいのかわからないのだけど…。


学校裏サイトなどがこの本にも当たり前のようにでてくる。
このような文化で育った世代を何世代と呼べばいいのだろう。
けっこう各家庭によってデジタルデバイドがあるような気もする。
ケータイの有無、自由に使えるPCの有無によって、入手する情報は違ってくるのだろうな。
それってある種のいじめにもつながるのだろうか。
そこがよくわからない。
親の育て方でそういうものを許容するかによって子どもの日常生活に影響を与えるのなら
怖い世の中だな、と思う。



さて、主人公のふたりの女子高生は、身近な人の死を経験した同級生の発言から、
人の死を見てみたいと思う。
季節はちょうど夏休み、ひとりは老人ホームのボランティアで、
ひとりは成功率7%の手術を控えた小学生にターゲットを絞り、死を体験することを願う。
お互いに話をするでもなくメールをするわけでもないのに、奇しくもお互いのターゲットは
クロスしていくが、そのことを本人たちは知らない。
最終的にひとりの少女を死に導くことになるのだが、それすら気づいているかどうか。

限られた登場人物で、AはBのことを知ってるけどCは知らず、BはCのことを知ってるけど
Aのことは知らないというように、少しずつずれて連鎖している。


これって実は怖いな、と思った。


自分が知らず知らずに行った何かが、ある人にとってはものすごい影響を受けてたりする。
たとえばこのようなブログで本人は深い意味もなく書いた一文が、
ある人にとっては叩きのめされるほどのショックを受けることがあるのかもしれない。
傷つけるつもりはなくても傷つけることがあるかもしれない。
打たれ強い人、ポジティブな人にとっては何でもなくても、
打たれ弱かったり、ネガティブだったり、たまたま気分が落ち込んでたりしたとき。
強いダメージを受けることがあるかもしれない。
ダメージを与えた側はそれとは気づかずに、だ。
思いやり、という言葉では解決できないのだろう。
その事実に気づいてなければ相手を思いやることさえできないのだから。
ただ、自分がどこかで影響を与えているかもしれないということは忘れないでおこうと思う。



主人公たち、女子高生の世代に特有ではないと思うけど、
お互いのことをどう思ってるか、核心の部分はなかなか聞きにくいものだ。
結婚して一緒に暮らして10年以上たつ夫婦でもまだ分かりあえないことがあるのだ。
年端もいかない高校生だと余計そうかもしれない。
もっともセンシティブな年頃だからね。


主人公のひとりの女子高生はボランティア先の老人ホームで働く“おっさん”に言われる。

「ネット上に悪口を書かれたからって、死ぬわけじゃあるまいし、世界が終わったような気分でいるのはおかしいよ。自分は価値のない人間だと思い込んで、周囲に同調することばかりに気を取られているから、さらに孤独だと感じるようになるんだ。本当は、きみはみんなに支えられているのに」

人は、たいていの人は誰かに支えられているものだ。
そこに気づくか気づけないかは大きいが、現実として支えられている。
目を閉じて耳をふさいでないで、もっと言葉を交わそう。
コミュニケーションこそ人間が得た大きな力なのだから。


ボクももっともっと子どもと、妻と、話をすべきだな、そう思ったのだった。

posted by だのん at 22:02 | Comment(0) | TrackBack(4) | 本読んだ






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