2009年02月07日

『廃墟建築士』 三崎亜記

本の帯にはこう書いてある。

 「ありえないことなど、ありえない」

三崎亜記の作品を読む度にそれを感じる。
今の次元とは異なる次元にパラレルワールドとして存在している世界。
いや、パラレルワールドといってしまうと、存在を認めてないことになるのかな。
現世でもふと視点を変えてみるとそれが見えてくるような気がする。
それは異質なものではなく、受け入れられるものとして、しっかりとそこに存在する。

さあ、視点を変えてみよう。
無機物だと思っていた、図書館や蔵にも意志があるのだ。
そのとき図書館の本は自由に羽ばたき、蔵は我が子を守る存在となりうる。


廃墟建築士
三崎 亜記
4087712737 廃墟建築士 三崎亜記




新しいものを生み出すとき、既存の価値観を否定するのではなく、
既存の価値観を尊重した上で、別角度から眺めてみるというのは有効だろう。
それは日常仕事をしているときにも考えようとしてることだ。
(実際なかなかうまくはいかないのだが…(・・;))

この本に収められた4編からは、すべてそのような印象を受ける。

世界最初の7階は地面の上に直接建てられていた…
荒廃していく廃墟を新たに建築する…

ユーモアに走ることなく、あくまでも真面目に真正面からその世界を構築していく。
短い文章の間にその独特の世界観を読者にじんわりと浸透させていく。
読者はゆっくりとその世界の一部となり、やがてそれを自分の価値観として世界を見ていく。
そのように導いていく手腕にはあいかわらず感心させられる。


『図書館』と題された3編目の作品は、『廃墟建築士』に対抗していえば、
『図書館調教師』というのだろうか。
(調教という言葉はあまり好意的な表現ではないと、作中でも語られていたが)

図書館…多かれ少なかれみなが接する場所だろう。

ボクもこれまでの人生の中でいろんな図書館を見てきた。
そのどれもが、決して同じではない、それぞれの個性を持っていた。

生まれ育った街にある大きな図書館は、博物館のような歴史を感じさせた。
いつも空気がひんやりしていた。
大学の図書館はボクの在学中に新しい図書館が学内に建てられ移ったので、
その二つを知っている。
旧図書館は狭く雑然としたイメージがあったが、少し時間の空いたときなど、
ふらっと立ち寄り、折り重なるように並べられている中から新しいものを探すのを楽しんだ。
まだメジャーになる前の宮部みゆきにはここで出会った。
新図書館は情報センターも併設され、かなり洗練されたイメージ。
AVコーナーもあり、疲れたときにはドヴォルザークをよく聞いた。
不良学生だったから、大学の図書館の優位点である専門書よりも、
国内外の文学など、自分の専門以外の本をよく読んでいた気がする。
この街に出てきてしばらく図書館から遠ざかっていたけど、
子どもが生まれてその利用頻度は格段に上昇した。
うちから歩いていける小さな図書館、駅前の中央図書館。
今では生活に欠かせない存在であり、週1でいろんな本をここで借りている。
子どもたちも毎週何冊も本に接することができる環境をとても幸せに思う。

本の内容からだいぶそれてしまった。
この『図書館調教師』の女性とは別の作品で出会っている。
あのときは動物園の檻の中だった。
珍しい動物から、一冊の古びた本へ、そして図書館の意志とふれあう。

そう、大いなる「意志」あるいは「意思」というのが三崎亜記の作品の肝かもしれない。
あるときは「街の意志」だったり、あるときは「本を統べるものの意志」であったり。

これまでの生活の中で意識してこなかったその存在に、ふと気づかされ驚かされ
やがて受け入れることができるとき、新たなものの見方ができるようになっているだろう。
そのような新たな気づきを感じながら毎日の生活を送れれば、
これまでとは違った充足感を得ることができるかもしれない。
タグ:三崎亜記
posted by だのん at 18:32 | Comment(2) | TrackBack(0) | 本読んだ






この記事へのコメント
こんにちは!
>新しいものを生み出すとき、既存の価値観を否定するのではなく、
>既存の価値観を尊重した上で、別角度から眺めてみるというのは有効だろう。
うん、それはものすごくそう思います。
私も気をつけてはいるんだけれど…(特に子供関係)一つの見方にこだわったり、一方的な考え方しかできなかったりでは、危険ですものね。

たとえばドラえもんの道具、ね。あんなにいっぱいあるけれど、もともとあったアレをこうして使えばいいだけなんじゃ…と思いながら見ることも、しばしば…(例えが悪い!ごめんなさーい)
Posted by おこ at 2009年02月13日 09:41
★おこさん
気をつけていてもできないことってありますよね。
こうありたいけど、知らず知らずに偏った見方になってるとか。
確かに子ども関係はその傾向があるのかもしれません。
なるべく柔軟にいきたいですね。

ドラえもんをそういう見方してるのは、実験好きなおこさんっぽくていいですね(^^)
ボクもやってみよう!
Posted by だのん at 2009年02月14日 16:40
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