2008年11月11日

『戸村飯店青春100連発』 瀬尾まいこ

めっちゃ笑える。ほんでめっちゃ泣ける。
戸村飯店の兄弟の一年間。
東京で、大阪で。
別に兄弟、仲がええわけでもないし、ほとんど会うことも話すこともない。
兄はさらりと暮らし、弟はガッツリ生きてる。
けどどちらもめっさ魅力的。
ほんで、してないようでいてふたりともしっかり成長してる。
あぁもう自分は忘れたけどコレも青春なんかなぁ。
100連発っていうタイトルにはたまげたけども、あれもこれもいろいろ入った中華定食、
たっぷりと堪能させてもらいました。

戸村飯店青春100連発
瀬尾まいこ
戸村飯店青春100連発 瀬尾まいこ

 


大阪の下町のよくある中華のちいちゃい店、“戸村飯店”の年子の兄弟。
兄は何でも器用で女の子にももてて、けどこの町に対してずっと居心地の悪さを感じていた。
高校卒業するやいなやさっさとあとくされなく家をでて東京に住む。
残った弟。大阪の申し子よろしく町に店に学校にとけ込んで、濃ゆい生活を送る。
弟は自分が店継ぐんやろなとおぼろげに思いながら、最後の高校生活をエンジョイすべく恋にいろんな行事に必死になって生きてる。
東京と大阪、そんな兄弟の生活が交互に語られ。
薄いのと濃いの、水と油。
それでもふたりはやっぱりふたりっきりの兄弟で…。



とにかく大阪弁の会話がおもろい。
小さいときから吉本を年中見て育って、DNAの二重らせんにボケとつっこみが組み込まれてる
新喜劇のベタなギャグは、自然と生活に入り込んでる。
ボケにつっこむのは当然として、ノリつっこみや、ボケにボケで返したり。
大阪人は自然と会話の高等テクニックを身につけてるのかな。

「結局はコウスケ、案ずるより生むが横山やすしやで」
「そやそや、恋愛なんてプッシュや。プッシュブッシュ大統領や」

「東京でバイトか。さすがヘイスケや。何しとる?またローソンか?」
「同じことしても仕方ないし、今度はコンビニちゃうけど」
「なんや流行のIT工業か?それやったら、残ったITとか分けてくれや」


大阪を離れてずいぶんとたつけど、この本のかもし出すベタな空気感は、
すんなりと自分になじんでるのが分かる。
人とのふれあいが希薄になってる世の中にあって、人情あふれる登場人物たちの行動は、
ホワンとあったかーいものを感じさせてくれる。
とてもうらやましくもある。
メールでいくら絵文字を使ったって、デコメールだってやっぱり直接の会話の力にはかなわない。
いつもメールのやりとりしかしてない大阪の友だちと、久々に電話で話したとき、
やっぱしゃべったらそれだけでほっとするなぁと思ったし。

あぁまた大阪帰って、どっぷりとその空気感につかりたいなぁ。


かといって、この本は大阪バンザイだけの本ではない。
兄貴が生活する東京にもすばらしい出会いがあり、ちょっとトーンが違うけど
しっかりしたコミュニケーションが存在する。
大切な恋人や友だちやバイト先の人たち。
コミュニケーションを築くのに東西は関係なく、重要なのはその人個人の資質なのかな。
ボクも今一度まわりを見回してみたい。そして自分を振り返りもしたい。
(いちばん大事な夫婦のコミュニケーションがかけてるやんけむかっ(怒り)と怒鳴られそうやけどあせあせ(飛び散る汗))


戸村飯店。
油がしみついてぬるぬるした床とか壁とか柱とか、なんか雑多な感じ。
家族経営のこじんまりとした店にあつまる常連客たち。
なんかええなあ、と思う。
ちょっとちゃうけど、ボクは大阪にいる頃にはしょっちゅう餃子の王将に行ってた。
チェーン店やけど、なんか気持ちが安らぐのは戸村飯店といっしょかもしれない。
東京にきて王将が身近にないのに戸惑いすら感じていた。
近くの店がつぶれて更地になったとき、「どうかここに王将作ってくれ!」って死ぬほど願うもんな。
(そんなとこに限ってスタバなんかになったりする…たらーっ(汗)
仲間とアホ話しながら戸村飯店でくうチャーハンはさぞかしうまいやろなぁと想像しながら読んだ。


で。
ボクにも年子ではないが弟がいる。
小学生の頃は遊んだり泣かしたりしたけど、大きくなるとやはり会話は減る。
ボクが大学生になり、弟は高校生になった。
母が入院し、そしてボクは家に寄りつかなくなった。
父や弟には相当心配や苦労をかけたと思う。
卒業すれば卒業したで勝手に横浜に就職し、家をでて、結婚し、やがて家まで買った。
長男なのに、親をおいて。
弟はボクのことうらんでも?おかしくない状況かも。
それでも会えば笑顔で話してくれる。
今はほとんど連絡することもないけど、ボクがふらりと大阪に帰ったときには、
必ず忙しい時間を割いて会いに来てくれる。
深刻な話はあまりしないけど、やっぱり頼れる奴だ。
弟がいてくれるから、ボクは安心して大阪を離れることができている。
ふたりだけの兄弟。
もうすぐ母の13回忌で大阪に帰る。
ゆっくりと話して飲めればええな、と思う。
そして、ありがとうが言えればいいなと、そう思っている。


戸村飯店の兄弟の青春はきっとこの先まだまだ続いていくのだろう。
続編があってもなくても(ま、ないか…)、きっと戸村飯店の兄弟は青春100連発なのだ!!
posted by だのん at 21:41 | Comment(4) | TrackBack(1) | 本読んだ





この記事へのコメント
先日はどうもありがとうございました。
さて。
兄弟がいて、いいねー。私は、どこを探してもいないもん。
うらやましい。
ちゃんと気持ちを伝えてね。お母さんもきっと喜ぶはず。
Posted by ちあき at 2008年11月12日 12:39
★ちあきさん
いえいえ、こちらこそ楽しませてもらいました。
ホンマにありがとうな。

そうかー。一人っ子組で手あげてたもんなぁ。
自分自身もそうやし、うちの子どもも兄妹、
奥さんも姉妹で、その子は3兄妹。
一人っ子があまり身近にいなかったりする。
兄弟がいるのって結構幸せなことなんやね。
うちの子たちも年中けんかしてるけど、お互いを必要としてるのは見ててわかる。

弟とはまぁなんか照れるけど話ししますよ。
Posted by だのん at 2008年11月13日 06:52
やっぱり大阪の空気感に満ちたお話だったのですね。
一人っ子なので、男兄弟ってこういうものなんだな、
関西弁のイントネーションいいなぁって思いました。
弟さんに、いてくれることの感謝、伝えてあげられたらいいですね。
Posted by 藍色 at 2009年01月18日 03:29
★藍色さん
大阪色出てましたねぇ、この作品。
とても懐かしい感じがしました。
ボクが大阪出身、男兄弟なのでずっぽりはまった感もありますが、
大阪以外の方が読んでも、いい印象をもつのはなんかうれしいです。

弟には…うーん、どうだろう。
今回帰省したときに会っていた時間は長かったけど、
あまりうまく感謝の気持ちはつたえられなかったかなぁ…。。
Posted by だのん at 2009年01月24日 12:39
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戸村飯店青春100連発 瀬尾まいこ
Excerpt: 装丁はタカハシデザイン室。装画は小池アミイゴ。第一章加筆訂正以降書き下ろし。大阪の下町、戸村飯店の兄弟は外見も性格も正反対で不仲...
Weblog: 粋な提案
Tracked: 2009-01-18 03:30