2008年10月29日

『告白』 湊かなえ

怖い。
この本を読み終えて、いや読んでる途中から抱いていた思いだ。
なにが怖いか?
それは子どもを育てるということの途方もない難しさ。
子どもに与える影響。
なにも子どもの性格は親の育て方だけに影響されるとは思っていない。
もちろん子どもの成長過程において家庭環境は大きな要素だとは思う。
だが他にも友だちたったり、先生や学校や、あるいはテレビ番組や本やゲームや、
子どもたちが生活の中でふれるありとあらゆるものが、子どもに影響を与える。
親はそれをすべて把握、あるいは管理することはできない。
すべて管理したいとも、思わない。
こういうふうに育ってほしいな、という思いがないではない。
だが、自分が自分の思うように育ったように、子どもにも意志はあるだろう。
尊重してやりたいとも思う。
じゃあ、その先になにが待ってる?
この本に出てくる子どもたちのようにならないとは決して言い切れないじゃないか。
そこが怖いのだ。
正解がないからこそ怖いのだ。

この本、数人の“告白”のみによって構成された特殊な形態の本は、
その一人称の表現であるが故に、その人の考えがダイレクトに伝わってくる。
それが客観的にみておかしなことであろうと、語り手当人にとってはそれがすべて。
人の告白がこんなに怖いものだとは思ってもみなかった。



告白
湊 かなえ
4575236284 告白 湊かなえ




まず本の帯に注目せずにはいられない。

愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。

もうこの告白だけでこの本を読まずにはいられない。

6章からなるこの本は、すべてが一つの幼児死亡事件にまつわる告白である。
1章ごとに告白の語り手も、告白の形式も違う。
1章の、教壇からクラスの生徒に語る先生の告白に始まり、
ひとりのクラスメイトの手紙による告白、犯人の母親の日記による告白、
犯人の少年の心の中の告白、そしてもうひとりの少年のWebでの告白、
そして最後は…ある人からの電話による告白。

特に1章は驚きである。
教師が終業式の日のホームルームでクラス全員を前に語る、
そのせりふだけで50ページ以上書ききってしまうところもすごいのだが、
そこに秘められた驚愕の事実と、教師の選んだ復讐の手段。
わが子を殺された親として、自ら制裁を下す教師の気持ちはよくわかる。
この1章だけでも十分読む価値はあるだろう。

それ以降の告白は、1章で知らされた事実を、いろんな観点から補完していく。
その順番と語り手の選択、告白の手段の選択は絶妙としか言いようがない。
読む方はもうこの流れを、とてもではないが止めることはできない。
そしてあらゆる告白を読みながら新たになる事実はすべて最後に集約されていく。
その劇的なラストへと。
いや読み手はラストを読み終えても、さらにその先を想像せずにはいられないのだ。
これには正直参った。


太宰治の人間失格をずいぶん昔に読んだ。
その長い長い告白を読んだ。
あれも少年時代の人格形成からはじめて告白されていたように思う。

今回の告白。
その裏にある少年たちの人格。
まだ中1から中2になる頃の13歳という年齢。
改正された少年法の適用は14歳からである。
その一歩手前の年齢。
しかしその時点でここまで成熟した、あるいはそれはとても未熟であるともいえるのだが、
人格が形成されてしまっていることに驚き戸惑う。


中1といえば、うちのアニキはもうあと3年しかないじゃないか。
短いあっという間の3年。
しかし少年の人格形成に大きな影響を与えてるには十分すぎるだろう3年。
なんてことだ。
のほほんとしている間にもうそんな年齢になっていたのか。
決して素直でまっすぐとはいえないその性格はどう変わっていくのだろう?
親としてどうしていけばいいのだろう?
この本は教育の本ではないが、人の子を持つ親に与えるインパクトは大きい。
少なくともボクはそう感じた。

なにが起きるか分からない世の中。
すべての人が被害者にも加害者にもなりえてしまう不安定な世の中。
そこで、その時代に子どもを育てるということは、とてもとても大きな責任を
親自身が背負っていかなければならないのだ。

今一度真剣に子育てについて考える必要があると感じた。

ねがわくば我が子が被害者にも加害者にもならんことを。
posted by だのん at 06:06 | Comment(2) | TrackBack(4) | 本読んだ






この記事へのコメント
こんばんは。
ごぶさたしちゃいました。
トラックバックさせていただきました。

やりきれなかったです。
すぐそばで一連の事件を目撃してしまったような、
何とも言えない気分になりました。

トラックバックお待ちしていますね。
Posted by 藍色 at 2008年11月26日 02:53
★藍色さん
こんにちは。コメント遅くなり申し訳ありません。

モノローグのすごさというか、持っている底力を感じた思いですね、
年末になりいろんなところの書評でもとりあげられてますが、デビュー作でこれだけの作品、ホントにすごいです。次はどんなの書いてくれるか楽しみですね。
Posted by だのん at 2008年12月21日 12:36
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