2008年06月28日

『阪急電車』 有川 浩

大阪で長く暮らしていると、近畿圏のたいていの電車には乗った気がする。
JR、私鉄、地下鉄いろいろ。
大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、三重、和歌山を走るさまざまな路線。
それぞれの路線にそれぞれのたくさんの思い出がある。

阪急電車は梅田を起点に、京都、神戸、宝塚と多方面に走ってる路線だ。
支線も入れると、相当な規模の路線。
ボクがいちばん使ったのは三宮に行く神戸線だけど、
この物語では、宝塚から西宮北口をつなぐ今津線が舞台。
片道わずか15分、8駅ほどの短い路線。
けど、その短い間に、人は出会い、別れ、恋を見つける。


阪急電車
有川 浩
阪急電車 有川浩


 


電車に乗って窓の外を眺めているといつも思うことがある。
この窓から見えるたくさんの家にそれぞれいろんな人生がつまってるんやろうなって。
全く見知らぬ人たちがそこで見知らぬ人生を生きてる。
見えるようで見えない人生の一瞬一瞬を。


それは電車の外だけでなく、電車に乗り合わせた人も同じ。
一駅一駅、人が降りてまた別の人が乗り込んでくる。
そのどの人にもその人だけの人生ドラマがある。

この物語の舞台、阪急今津線の短いたった15分の間にもいろんなドラマが生まれている。

宝塚を始発に一駅一駅、電車は西宮北口へ向かう。
その一駅ごとにある人に焦点があてられ、物語は生まれる。
老若男女、恋の始まりの瞬間もあれば、別れの引き金の瞬間も。
ある駅でわき役だった人が、次の駅では主役へと攻守交代。
そのどれもが微笑ましく描かれていく。
とてもさわやかな読後感を与えてくれてすがすがしい。

ボクが電車に乗って人の声を聞かなくなって久しい。
それは今はいつもヘッドフォン音楽をしてるから。
けどそれまでは、聞くともなく他の乗客の話を聞いていたような気がする。
そして、何かを感じ取っていたかもしれない。

もっとも苦痛だったのは、大阪から関東に出てきた直後の通勤電車。
満員電車で周囲からあふれてくる東京弁の洪水には耳を覆いたくなった。
だめだ……こんなとこでやってくの大阪人としては無理…。
朝から死ぬ思いで会社に通ってたのを覚えてる。
きっと東京や地方から関西に出てきた人も同じ苦痛を味わってるのかもしれへんけど。
けどいつの頃からかそれが全く苦痛でなくなり、逆に長期休暇で大阪に帰って、
新大阪で御堂筋線に乗り換えると妙な違和感を感じるようになってた。
人間の適応力っておそろしい。
といいつつ、今でも大阪弁しゃべってるけどもあせあせ(飛び散る汗)

この物語にも出てきたけど、関西の高校生が何人かで電車に乗ってて、
しゃべってるのを聞いてるのはオモロい。
マジで爆笑トーク。
しっかりオチを付けてくるところが関西人。
ボクも高校生の頃、何人か決まったメンバーで帰る電車の道中、
周囲の迷惑顧みず、アホな話で盛り上がってたなぁ、としみじみ思い出す。


閑話休題。
この今津線沿線の有名な大学には学祭でいったことがある。
今の上司は、なんとその大学出身らしい。
さらに大学の後輩が結婚してこの沿線に住んでる。一度遊びに行ったな。

何より思い出深いのはやっぱり仁川かな。
そう、仁川と言えば阪神競馬場。
学生の頃、友だち10人以上でリニューアルしたばかりの阪神競馬場に押し寄せたなぁ。
ごみごみした京都競馬場よりもすっきりした阪神競馬場のほうがボクは好きやった。
心に残ってるレースは、全盛期のナリタブライアンをその年唯一破った馬、スターマンがでたレース。
確かGUの鳴尾記念だったかな。
もちろんスターマンはぶっちぎりで勝って、しっかり馬券もとらせてもらいました(^^)v


最初に戻るが、こんな風に関西のいろんな路線それぞれにたくさん思い出がある。
そしてそれがボクの人生のドラマのひとコマ。
人はみないろんな思いを抱えて、ある時は急いである時はのんびりと電車に乗っている。
電車は走るよ。素敵なドラマを乗せてね。
それも、東京の路線よりも阪急電車で描いてくれた著者に感謝。
関西弁の空気感、めっちゃおもしろかったよ。
posted by だのん at 12:18 | Comment(4) | TrackBack(2) | 本読んだ





この記事へのコメント
こんばんは。
身近でどこかでありそうなお話でいっぱい共感できました。
阪急電車ならではの、温かい空気を感じられて心地よかったです。
その後の物語も、読みたくなるような作品でしたね。
Posted by 藍色 at 2008年06月29日 02:25
こんにちは!
友達でも親戚でも、自分の知らないところでいろんな経験したんだろうなーって思うこと、たくさんあります。
他の、すれ違うだけの縁の人だってそうなんですよね。
当たり前のことだけど、なかなか気づきにくいことに気づけるっていいなあ。

京都に修学旅行に行ったとき、地元の高校生らしい女の子が、普通にはんなりとした京都弁で話してるのを見て、
「おおおーっ」
と、妙に感動したのを思い出しました!
Posted by おこ at 2008年07月01日 00:59
★藍色さん
こんにちは。
ひとりひとりに焦点をあてると、その瞬間瞬間にもいろんなドラマがあるんでしょうね。
そこをうまく拾いながら、連作小説にしたてた著者の視点はすばらしいと思います。
この本の復路の部分が往路の人たちの後日談になってましたが、
さらにそのあとも気になりますね。
とにかくほのぼのしました。

今このコメントを書いていて思い出したのが。JR福知山線の事故。
あの電車に乗り合わせた人も、いろんなドラマを抱えていたはずです。
つらい結果になっただけに、とても複雑な気分になります。
Posted by だのん at 2008年07月01日 06:35
★おこさん
こんにちは!
この本を読んでから、電車に乗って周りの人たちに少し興味がわきましたが、
じろじろ見るわけにはいかず。。(怪しすぎ)
すました顔している人でも、心の中は悩みでいっぱいの人もいるだろうし、
週末の予定を考えてニンマリしてる人もいるんでしょう。
それぞれの人生を、その人なりに生きている。
おもしろいものですね。

京都の子は京都弁、神戸の子は神戸弁、大阪ミナミの子は河内弁でしゃべりますよ〜。
一口に関西弁といってもいろいろあっておもしろいですよ。
そんなに距離は離れてないのに、言葉に顔があって楽しいです。
Posted by だのん at 2008年07月01日 06:42
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